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たのしくて、最も効果の高い英語学習法の一つ、それは「絵本の多読」です。
絵本なら、あまり難しく構えなくても、すらすら読めそうな気がしますよね。
実際、絵本をたくさん読んで高い英語力を身につけた、という上級者は結構います。
ではどんな絵本を読むのがよいのでしょうか?
英語の絵本なら何でもいいわけではありません。
実は、子ども向けの絵本の半分以上は、大人の英語学習には向いていません。
(※理由は後述します!)
そこで今回は、絵本を使って英語を勉強したい大人の学習者向けに、おすすめの本をご紹介します。
大人の英語学習に使えるのはどんな絵本か?
「赤ちゃん向け」と「幼児向け」絵本の違い
まず、下の2枚の写真を見比べて下さい。
大人の英語学習に向いているのはどちらでしょうか?
Aは「Where’s Spot?」、
Bは「Curious George Goes Fishing」、
どちらも、人気でよく読まれている絵本です。
違いは一目瞭然、「文字数」ですね。
Aは、まだ言葉の話せない乳幼児向けの絵本なので、文字が大きくて、文字数も少ないです。
赤ちゃんに読み聞かせるのには良くても、大人の学習者には、内容がなさすぎて物足りないです。
Bは、少し言葉を話せるようになってきた幼児向けの絵本です。いろんな文章のバリエーションがあり、大人の学習者が読むと、知らない単語にも出合えて、ストーリーもそこそこ楽しめ、英語の「多読」へのよい一歩になります。
というわけで、大人の英語学習者におすすめしたいのはBです。
文字が多ければ多いほど、描写が細かくなり、ストーリーに深みが出て、より大人向きの内容になります。
大人の英語学習に向かない絵本の例
他のサイトでよく紹介されている、下記の定番の絵本は、大人の英語学習にはあまりおすすめできません。
- The Very Hungry Caterpillar(はらぺこあおむし)
- Where the Wild Things Are(かいじゅうたちのいるところ)
- Goodnight Moon(おやすみなさい おつきさま)
いずれも総語数が100~300語くらいと短く、完全に赤ちゃん向けの絵本です。
読んでも害はありませんが、英語学習には効率的ではありません。
子どもには大人とは違った「笑いのツボ」があります。
子どもは単純な音の繰り返しが面白かったり、キャラクターの表情がおかしかったり…。
幼児のバイリンガル教育に定評のある絵本が、大人の英語学習には向くとはかぎらないんですね。
大人向け絵本の「選定基準」
1.実際に英語圏の子どもたちに人気のある絵本です
海外の有名な読書サイト「goodreads」のランキング「Best Children’s Books」をもとに作成しました(2017年11月11日現在)。
ここで取り上げている絵本は、どれも読者からの評価が高く、レビュー数もすごく多いです(最低1万レビュー以上)。
つまり、実際にネイティブの子どもたちから愛されている絵本です!
ネイティブもおそらく幼少期に読んだことのある名作ばかりなので、会話のネタにもなりますよ。
2.1000語以上のボリュームのある絵本です
就学前の幼児向けの絵本は、当然ながら短い話(総語数が300~500語くらい)がとても多いです。
親が子どもを寝かしつける前に「読み聞かせ」する場合、それくらいの長さがちょうどよいんですね。
筆者も子育て経験者なのでよくわかりますが、1000語以上ある絵本だと、読み聞かせに時間がかかりすぎて、疲れているときは嫌になります。
でも私たち大人が英語を学ぶ場合、さすがに300語程度の絵本では内容が薄すぎて物足りないです。
そこでこの記事では、前出の絵本ランキングの中から、原則として1冊あたり1000語以上の絵本のみ(※)を選んでいます。
1000語といってもイメージがわきづらいかもしれませんが、ネイティブの大人なら3分くらいで読める文章量です(じっくり読み聞かせするなら5~10分くらい)。
※語数はDOGObooks、あるいはReading Length調べ。
大人の英語学習に役立つ「簡単な絵本」20選
上記の条件で選んだベスト絵本がこちらです!
1.The Cat in the Hat
by Dr. Seuss
初版発行:1957年
総語数:1621語
英語を学ぶ以上、ドクター・スースの作品は一度は読んでおきたいです。文末の韻を意識しながら、リズム感あふれる文章を楽しんでみましょう。ただし辞書に載っていない作者独自の「造語」も出てくるので要注意。ほかに、「Green Eggs and Ham」「The Lorax」「How the Grinch Stole Christmas!」「Oh, The Places You’ll Go!」「One Fish, Two Fish, Red Fish, Blue Fish」などの作品もネイティブの子どもたちに大人気です。
CD付きのバージョンはこちら。
人気の5冊セット「Dr. Seuss’s Beginner Book Collection」もおすすめです。
2.The Tale of Peter Rabbit
by Beatrix Potter
初版発行:1902年
総語数:975語
1世紀以上もの間、世界中の子どもたちに愛されてきたクラシックストーリー(全23作品)。児童向けですが、単語や表現が凝っていて、意外に英語のレベルが高いです。細かい点にこだわらず、雰囲気を楽しむようにしましょう。
ほかの作品も読みたい人は、シリーズ中4作品が入った「The Complete Tales of Beatrix Potter’s Peter Rabbit (Children’s Classic Collections)」がおすすめ。
全23作品のイギリス英語による本格的オーディオブック「Complete Tales Audio Boxed Set Unabridged Compact Disc」も人気です。
3.Make Way for Ducklings
by Robert McCloskey
初版発行:1941年
総語数:1149語
発刊以来、70年以上にわたって愛されてきた名作絵本。ボストンにやってきた子連れのカモが危険いっぱいの街を旅する話です。2色刷りのイラストがなんとも味がありますね。交通の騒音やカモの鳴き声など、英語の擬声語もいろいろ学べますよ。
4.The Polar Express
by Chris Van Allsburg
初版発行:1985年
総語数:1054語
クリスマスの時期に読まれる定番の絵本といえばコレ。クリスマスイブの夜中、サンタクロースの存在を信じる少年の家にSL列車がやってきて…。雪が舞い落ちる幻想的なイラストが印象的。1986年に絵本界で最も名誉あるカルデコット賞を受賞しました。
5.Curious George
by H.A. Rey
初版発行:1941年
総語数:918語(第1話)
これも一度は英語で読んでおきたい人気の絵本シリーズです。辛抱ができない子ザルのジョージが毎回いろんなところでへまをやらかす「ドジかわいい」ストーリー。文章もクセのないシンプルなアメリカ英語でとても読みやすいです。
まとめて読みたい人は、オリジナルのロングストーリー7作品を掲載した大型本「The Complete Adventures of Curious George: 75th Anniversary Edition」がダントツでおすすめです。なんと俳優ジョン・クラシンスキー(『The Office』)による朗読音声(ダウンロード)も付いてます!
6.Stellaluna
by Janell Cannon
初版発行:1993年
総語数:1463語
90年代に発刊された比較的新しい作品です。不運な事件をきっかけにほかの鳥に育てられたコウモリの子どもが、本当のお母さんに会いにいくという話。アメリカで「先生たちが選ぶ児童書100冊」にも選ばれるなど、非常に評価の高い絵本です。
7.The Poky Little Puppy
by Janette Sebring Lowrey
初版発行:1942年
総語数:1163語
初版発行以来、何世代にもわたって読み継がれてきた名作絵本。主人公の子犬がフェンスの下に穴を掘って、外の世界を探検にいくのですが…。英語も難しくないので、初心者でも簡単に読めますよ。
8.Cloudy With a Chance of Meatballs
by Judi Barrett
初版発行:1978年
総語数:1231語
もし雨の代わりに空から食べ物が降ってきたら…? そんな変わったストーリー設定で読者を魅了するファンタジー的な絵本。精密なイラストも味わいがあります。気に入った人は、続編「Pickles to Pittsburgh」や続々編「Planet of the Pies」もどうぞ。
9.Frog and Toad Are Friends (Frog and Toad, #1)
by Arnold Lobel
初版発行:1970年
総語数:2281語
大人気「Frog and Toad」シリーズの第1作(全4作)。5本の短編が収録されています。日本では小学校で国語教科書にも採用されているので、子どもの頃に読んだ人も多いかも。「ともだち」をテーマとした心温まるストーリーです。
10.Blueberries for Sal
by Robert McCloskey
初版発行:1948年
総語数:1042語
上で紹介した「Make Way for Ducklings」を書いた絵本作家マクロスキーのもう一つの人気作品。女の子がお母さんと一緒に野山にブルーベリーを摘みに行ったら、そこには野生のクマの親子が…。ブルーベリー色(ダークブルー)のシンプルな色使いが独特の雰囲気を演出しています。
11.The Little House
by Virginia Lee Burton
初版発行:1942年
総語数:1388語
田舎に建てられた美しい一軒家が、月日の流れとともに都市化の波にどんどん飲みこまれていく様子を描いた不朽の名作。ほんのりしたかわいいイラストですが、「都市化」「自然」「幸せ」といったテーマについて考えさせられる作品です。日本では「ちいさいおうち」として知られ、石井桃子さんが翻訳。カルデコット賞受賞。
CD付きのペーパーバックはこちら。
12.The Story of Babar
by Jean de Brunhoff
初版発行:1931年
総語数:1192語
初版はフランス語で刊行され、世界中で愛され続けてきた名作絵本。日本ではあまり読まれていないようですので、もったいないですね。猟師に母親を殺された小ゾウがジャングルを抜け出し、人間社会へ旅すると……。
13.Mike Mulligan and His Steam Shovel
by Virginia Lee Burton
初版発行:1939年
総語数:1688語
作者はさきほど紹介した「The Little House」のバートンです。仕事を失った古い蒸気式ショベルカーと、その操縦士が、一発逆転をねらって、ある大きな仕事を引き受けるというお話。「失業」や「産業化」「機械化」など現代にも通じる社会的テーマが描かれています。「The Little House」では自然を破壊する側だったショベルカーが、今度は主役になって悪戦苦闘するというのも面白いですね。
CD付きのバージョンはこちら。
14.A Bad Case of Stripes
by David Shannon
初版発行:1998年
総語数:1428語
人と違うことを恐れ、自分の本当の気持ちを押し殺している少女カミラの体に、ある日突然、派手な模様ができてしまう話。「個性」や「自尊心」「他人の視線」といったことについて考えさせられます。アニメを思わせる登場人物の表情豊かなイラストも印象的です。
15.Chrysanthemum
by Kevin Henkes
初版発行:1991年
総語数:1141語
「Chrysanthemum (菊)」という名のネズミが、友達から名前をからかわれて落ち込んでしまい…。この絵本も「自尊心」や「イジメ」といったテーマを扱っています。作者のケヴィン・ヘンケスは「Kitten’s First Full Moon」でカルデコット賞を受賞。
16.Sylvester and the Magic Pebble
by William Steig
初版発行:1969年
総語数:1425語
魔法の力で岩になってしまい、元に戻れなくなった悲しいロバの話。やさしいタッチのイラストが作品にマッチしていて、何度も読み返したくなる名作です。カルデコット賞受賞作。ちなみに作者スタイグは、のちにアニメ映画化された「Shrek」の生みの親です。
17.The Little Engine That Could
by Watty Piper
初版発行:1930年
総語数:1167語
1930年刊行の超ロングセラー。山の向こうに住む子どもたちへのプレゼントをたくさん積んだ汽車が途中で故障してしまい、ほかの列車に助けを求めるが……。「頑張ること」や「諦めないこと」の大切さを教えてくれる絵本。「I think I can」というフレーズもこの絵本で有名になりました。
18.Bread and Jam for Frances
by Russell Hoban
初版発行:1964年
総語数:1720語
アメリカの子どもたちに人気のキャラクター「フランセス」シリーズの一つ。大好物のジャムパンしか食べないコグマのフランセスに、見かねたお母さんクマが毎日、ジャムパンばかり食べさせてみたら…。少し長いですが、英語は平易で読みやすいです。
19.Strega Nona
by Tomie dePaola (Author and Illustrator)
初版発行:1975年
総語数:1245語
困った人を助ける心優しい魔法使いのおばあさんノナが、お手伝いさんを雇ったら大変な事件が起きて…。英語は読みやすく、絵もかわいらしいです。カルデコット賞受賞。
20.Miss Rumphius
by Barbara Cooney
初版発行:1982年
総語数:1243語
子どものころにおじいちゃんに誓った3つの夢を実現するためにまっすぐに生きた女性の一生を、その孫が回想する、というスケールの大きなお話です。自分の人生、幸せ、夢、家族などについて考えさせられ、まさに「大人も楽しめる絵本」といえるでしょう。パステル調の色使いも素敵です。
英語学習に効く「絵本の読み方」
1.何度も読み返す!
絵本って、きっとみなさんが子どものとき、毎日毎日、親や大人から繰り返し読んでもらいましたよね?
大人向けの本と違い、絵本は何度も読むことを想定して、言葉のリズム感を大切にしている作品が多いんです(Dr.Seussシリーズなどまさにそう)。
何度も何度も読むことで、言葉のリズムが体に刻み込まれていきます。
せっかく買った絵本を1回かぎりで終わらすのはもったいないですよ。
2.いろいろな絵本を読む!
この記事で紹介した絵本は、1冊あたり1000~2000語程度のボリュームなので、読み通すのにそれほど時間はかかりません。
毎日1冊読めば20日間、つまり1カ月もかからずに読破できます。
いろんな絵本を読んでいると、同じ単語や表現が何回も出てきたりするので、小説によく使われる英語表現に慣れていきます。
また絵本を通して、英語圏の社会や文化について学べるのも魅力ですね。
3.「多読」だけでなく「多聴」も!
今回紹介した絵本はどれもすごく有名な作品なので、ネットで検索すれば、無料の読み聞かせ動画やアニメ動画、オーディオブック(朗読音声)などが見つかったりします。
絵本を読んで基本的なストーリーがすでに頭の中に入っているので、リスニングもかなり楽になっています。
絵本で「多読」した後は、ネット上の無料の素材をつかって「多聴」しましょう!
これはとてもお得で、相乗効果の高い学習法です。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
みなさんが見たこと、聞いたことのない絵本が結構ランクインしていたのではないでしょうか。
海外ではとても人気のある絵本でも、なぜか日本に伝わっていないということがよくあります。
せっかく素晴らしい英語の絵本がたくさんあって、ネットで注文すれば簡単に手に入るのに、そのチャンスを逃すのはもったいないですよね。
絵本を使った英語学習はとても楽しくて、学習効果も非常に高いです。
ぜひここで紹介した絵本を、片っ端から、何度も読んでみてください。
そうすれば、一生役立つ英語力の土台になりますよ。
Happy reading!