騙されるな!SVL12000(究極の英単語)をおすすめしない全理由

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macha

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アラフォー翻訳家。英検1級/TOEIC満点/言語学修士。「極力勉強せず、楽しみながら英語力を自然に上げる」がモットー。英語育児(5歳)も実践中です。

単語力を上げたい英語学習者の多くがきっとお世話になっている「SVL(標準語彙水準)12000」。使いようによっては便利なツールですが、その欠点や限界については意外に知られていないようです。

ネットで調べても似たような話を書いている人は見当たらない(見つからなかった)ので、推定語彙力2万語の僕から見て、SVLの気になる点を簡単にまとめてみます。

SVLの長所と短所を理解し、より効果的なボキャビルにつなげていただけたら幸いです。




SVL12000とは?

「標準語彙水準SVL12000」(SVL=Standard Vocabulary List)

英語教材で有名なアルクが厳選した12000語の重要英単語リストです。
基礎から上級まで、1000語ずつ、全部で12のレベルに分けられています。

(アルクさんのサイトより)

採用語彙はどこで見られる?

SVLの採用語彙は、アルクさんのサイト(レベル別語彙リストSVL12000)で全部見られます。

たとえば、各レベルにどんな単語があるかというと、こんな感じです。

LV1 angry number south
LV2 airline nearly servant
LV3 analysis mysterious sensitive
LV4 affection log restore
LV5 alliance morally routine
LV6 almighty navigation shit
LV7 altar masculine sherry
LV8 agonize mammoth ripple
LV9 ailment nip severity
LV10 airship midland revolutionize
LV11 allusion lurid revitalize
LV12 agrarian modulate schism

SVLの良い点3つ(メリット)

僕から見たSVLを活用するメリットです。

1.試験対策に役立つ

多くの試験やテキストの参照元になっているので、SVLの掲載単語はテストによく出ます。試験ごとにどのレベルの単語まで覚えたらいいのか、というのがとてもわかりやすいです。

たとえば、英検1級なら1万2000~3000語レベルなので、SVLのレベル12まで全部覚えたらだいたい試験範囲を網羅できます。TOEICなら1万語レベルなので、レベル10くらいで十分です。もちろん、高校・大学受験などにも使えます。

2.単語帳が揃っている

SVL自体は純粋な語彙リストですが、アルクの「究極の英単語」シリーズや「キクタン」シリーズのレベル分けにも使われています。

究極の英単語SVL」は初級・中級・上級・超上級の4冊(各3000語収録)に分かれていて、4冊ともやれば1万2000語レベルの語彙が身につくようになっています。

またアルク刊ではありませんが、「究極の英単語」の続編ともいえる1万2001~2万4000語レベルの語彙を収録した「極限の英単語」シリーズや、さらにその先の2万4001~3万6000語レベルを対象にした「終極の英単語」シリーズという単語帳もKindle版で出ています。

3.「英辞郎」にも対応

オンライン辞書の「英辞郎」で英単語を調べれば、SVLを簡単に確認できます。このレベルを見て、どれくらい重要な単語なのかを判断できます。



SVLの問題点4つ(デメリット)

僕の感じている問題点です。

1.レベル分けがおかしい

SVLは全部で12のレベル順に分かれていますが、内訳をみると必ずしも「難易度順」にはなっていません。
(※理由については後述します)

たとえばレベル12(最上位)の単語を見ると、

難:
extemporaneous 即席の
fastidious 気難しい
omnipotent 全能の
tempestuous 大嵐の
truant 不登校児
vociferous 声高な

ここらへんはまぁいいでしょう。でも・・・

易:
acorn どんぐり
hiccup しゃっくり
lagoon 沼
lava 溶岩
mane (ライオン)たてがみ
sleigh そり
tadpole オタマジャクシ
toad ヒキガエル
veterinarian 獣医
wand 杖
whisker (ネコ)ひげ

レベルの高い単語ばかりかと思いきや、ネイティブの幼児でも知っている単語が多数混ざっています・・・。

2.重要な単語が多数抜けている

挙げたらキリがないですが、日常生活で普通に使われる基礎単語がいろいろ入っていません。
(※これも考えられる理由については後述します)

A. ネイティブの幼児でも知っている基礎単語

抜けている単語の例:
centipede ムカデ
chrysalis さなぎ
cicada セミ
dragonfly トンボ
firefly ホタル
icicle 氷柱
nectar (花)蜜
platypus カモノハシ
scarecrow かかし
seahorse タツノオトシゴ
tambourine タンバリン
tusk (ゾウ)牙

日本語訳を見てわかるとおり、どれもそんなに難しい言葉ではありません。とくに動植物系の語彙がかなり抜けている印象です。

B. 主婦(主夫)が毎日使うような日本の食材

抜けている単語の例:
bean sprouts もやし
bonito カツオ
burdock ごぼう
lotus root レンコン
mandarin / satsuma みかん
yellowtail ブリ(ハマチ)
saury サンマ
scallion / leek ネギ

C. 連結しない複合名詞

英語では、2~3コの単語が合わさって一つの意味になる言葉が結構たくさんあります。ところがSVLは「1単語」の語彙しか対象にしていないため、こういう言葉は基本的にスルーされています。

複合名詞の例:
Adam’s apple 喉仏
Athlete’s foot 水虫
bubble wrap プチプチ
Big Dipper 北斗七星
clothes pin 洗濯ばさみ
cutting board まな板
eye patch 眼帯
praying mantis カマキリ
sea anemone イソギンチャク
sea urchin ウニ
shooting star 流れ星

こういう複合名詞はほかにも山ほどあるので、ここらへんを知らないと日常会話ではかなり困ります・・・。

D. ヒトの生理現象

放送禁止用語になるくらいのスラングや悪口ならともかく、多少下品に感じられる言葉もはじかれているようです。中学生が面白がるからでしょうか・・・。

生理現象の単語の例:
burp / belch  げっぷ
booger / snot 鼻くそ
dandruff フケ
earwax 耳くそ
fart おなら
pee 小便
poo / poop 大便

macha
でもなぜか放送禁止用語の「shit」がレベル6に載ってるよ・・・笑

3.最低限の意味・用法しか学べない

すでに見た通り、SVLは(日本語訳のない)純粋な単語リストです。だから、その単語がどういう意味をもつのかということは考慮されていません。

たとえば、「study」という単語なら、学校で最初に習う「勉強する」以外にも、「書斎」や「調べる・検討する」など、さまざまな意味があります。

Cambridge Dictionaryによると、意味ごとのCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)のレベルは次のようになっています。

studyの意味とCEFRレベル

A1 「勉強する」
例)to study biology/chemistry

B1 「書斎」
例)If we clear out the spare room, you can use it as a study.

B2 「調べる・検討する」
例)I want time to study this contract thoroughly before signing it.

本来なら、A1(入門)の段階で「勉強する」という意味・用法を覚えて、中級のB1やB2にレベルアップしたら「書斎」や「調べる」などほかの意味も学んでいきたいところですよね。

ところがSVLでは、studyはレベル1に1回出てくるだけです。このように、SVLを元に作られた単語帳では、各単語の代表的な意味を1~3個くらい載せているだけで、レベルに応じた意味や用法の違いを学ぶのには適していません。

単語帳によってはいろんな意味や用法を説明してくれていたりしますが、さすがにA1レベルの学習者にC1やC2の用法を教えても仕方ないので、あまりに難易度がかけ離れている場合はやはり説明が省かれているようです。

4.単語のだぶりが多い

SVLでは同じ単語の別品詞は別単語として扱っているため、かなりのだぶりが見られます。

だぶっている単語の例

LV5 abandon, abandoned
LV7 abandonment

LV4 absorb
LV8 absorbing, absorption

LV4 critical, criticism, criticize
LV5 critic

LV4 generous
LV5 generously

SVLでは単語データを機械的に処理しているので仕方ないといえば仕方ないのですが、SVL12000を全部覚えても、12000種類の語彙を覚えたという意味にはならないので、語彙力をやや水増ししている感はあります。笑



SVLを中心にボキャビルするとどうなるか?

いったんここでまとめると、SVLには次のような弊害があるといえます。

SVLの重大な欠点

  • 1万2000語覚えても、英語の絵本や児童書に知らない単語がたくさん出てくる
  • 日常英会話で難しい単語ばかり使って、やさしい表現の仕方ができない
  • 単語の「レベル感」(ネイティブにとっての難しさ)が身につかない
  • 単語の基本的な意味(第一義や第二義)しか学べない
  • 頑張ってたくさん覚えたつもりでも、意外に語彙力がない(重複が多いから)

SVLがおかしい理由を考えてみた

なぜ上記のような問題が生じているのか、原因を考察&推測してみます。

1.頻出順=難易度順ではない

SVLでは「頻出順」に単語がレベル分けされていますが、「レベル」という言葉を使っているために「難易度順」だと誤解されがちです。でも、頻度と難易度は必ずしも比例しません。

たとえば、

pacifier おしゃぶり
stroller / pram ベビーカー(乳母車)
diaper おむつ

いずれも超基本的な単語ですが、子育て世代や保育関係者など特定の人(時期)しか使わないために、コーパスでは「頻度が低い=重要性が低い」とみなされます。実際、上の2つの語彙はSVL12000には出てきません(diaperはレベル11)。

このようにネイティブの幼児がわかるような簡単な言葉でも、統計的に使用頻度が低いと、SVLでは「レベル」が高い語彙として扱われます(下図の右矢印)。こういう語彙を学習するときにSVLの「レベルが高い」=「難しい単語」だと思って暗記すると、言葉のニュアンスを取り違える原因となります。

また逆に、ネイティブにとって難しい響きの感じられる単語でも(ラテン語由来の語彙など)、使用頻度が高いとSVLのレベルは低くなる傾向があります(上図の左矢印)。これを理解していないと、友達同士のくだけた日常会話なのに、堅苦しい単語ばかり使ってしまう・・・なんてことになりかねません。

2.データが恣意的に抽出されている

SVLはコーパス(言語のデータベース)を元に作成されていますが、人の判断も多少加わっているようです。

アルクさんのサイトには、

「標準語彙水準SVL12000」では、ネイティブスピーカーの「使用頻度」をベースにしながら、日本人学習者にとっての「有用性」「重要性」を考慮して単語の選定を行いました。

と書かれてます。つまり、ある程度は主観が入った語彙リストになっていることがわかります。スラングなどがはじかれているのも、これが影響しているのかもしれません。

3.元データは「イギリス英語の少し古い書き言葉」

SVL12000は「BNC(The British National Corpus)」というコーパスを元に、さまざまなコーパスの頻度リストを組み合わせて統計的に作られています(SVL作成にかかわった投野由紀夫先生の文章など参照)。

このBNCはイギリス英語のコーパス(約1億語)なので、アメリカ英語はそもそも対象になっていません。

また内訳をみると、「90%が書き言葉、話し言葉は10%」であり、わりとかための文書が多く採録されています。(BNCオンラインのサイトより)

「書き言葉」には、新聞(地方紙、全国紙)、専門雑誌類、学術書、大衆小説、手紙やメモ類(出版物、非出版物)、大学などの学内印刷物のエッセイなど、多様なテキストが含まれています。

さらにBNCの採録データは「1985~1990年」と少し古いのも気になります(同上)。現代ならメール、ブログ、SNSなど、より口語的なデジタルデータが大量に手に入るはずですが、そういったインターネット登場以来の「生きた英語」はここから抜け落ちています。

つまり、BNCを元に作られたSVLも、基本的に「イギリス英語の」「少し古い」「書き言葉」をメインに単語が選定されている、ということがわかります。

まとめ:SVLは不要?

さて、いろいろ批判的なことも書きましたが、SVL自体は別に悪いリストではありません。

少なくとも次の点は評価してよいと思っています。

SVLの功績

  • 単語学習の一つのモデルを示した
  • 英単語力を「見える化」した
  • 語彙学習にデータ的手法(コーパス)をもたらした
  • 従来の単語帳が採用しなかった単語も積極的に採用した

SVLはボキャビルの一つの基準にはなりますが、「絶対的な基準」ではありませんし、SVL12000を全部覚えても、ネイティブの幼児向けの絵本ですら知らない単語がたくさん出てくるのも事実です。

このとき勘違いしがちですが、

英語の絵本にはSVL12000を超えるような超難解な単語も出てくる

ではありません。

英語の絵本に出てくるような基礎単語がなぜかSVL12000から抜けている

という方が正しい認識です。

普段いろんなタイプの英語に接している僕から見て、SVLはネイティブが高校生くらいまでに習得する語彙の半分くらいをカバーしている印象です。

重要で必要な単語がコンパクトにまとまっているので、目的に応じてうまく活用すれば、ある程度は効果を発揮すると思います。でもSVLは選定語彙にやや偏りがあるので、映画や海外ドラマ、小説などを楽しむのには適していません。

まとめると、

SVLはボキャビルの「補助ツール」として割り切って使う

のがよいですね。

では、SVLに頼らない場合、どのようにボキャビルするのがよいのでしょうか? それについては、下記の記事にまとめていますのでぜひご覧ください。

Stay healthy and keep learning!