【翻訳屋の本音】ぶっちゃけ「英文科」って行く意味あるの?

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macha

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アラフォー翻訳家。英検1級/TOEIC満点/言語学修士。「極力勉強せず、楽しみながら英語力を自然に上げる」がモットー。英語育児(5歳)も実践中です。

「英文科へいっても英語ができるようにならない」「会話クラスが週1回しかない」「就職で有利になるわけでもない」など、最近は大学の英文科に対していろんな批判が聞かれるようになりました。

ぶっちゃけ、英文科っていく価値あるんでしょうか?
そんな疑問をもっている人も少なくないと思います。

そこでこの記事では、なんとなく国際的な雰囲気にひかれて某私大の英文科に進学し、今は翻訳家としてのんきに人生を送っているmacha(筆者)が、改めて、英文科で学んだ経験を振り返ってみたいと思います。

英文科って何を学ぶ場所?

「英文科」とは

この記事では、下記の専攻をざっくりまとめて「英文科」を呼ぶことにします。大学によってカリキュラムに多少の違いはあっても、教えられている内容はだいたい同じです。

  • 英文学科
  • 英米文学科
  • 英語学科
  • 英語英文学科
  • 英語英米文化学科
  • 英語コミュニケーション学科

学べること

一般に英文科では、次のような授業が行われています。

学べる科目(例)

  • 英米文学
  • 英語史
  • 英文法
  • 英作文
  • 英会話
  • 音声学
  • 時事英語
  • 英米演劇
  • 異文化コミュニケーション論

実用か、教養か

気を付けたいのは、英文科は「ツール」としての英語ではなく、「英文学」や「英語学(言語学)」などを学ぶところという点。
スピーキングやライティングのクラスも多少ありますが、語学学校のように超少人数の英会話のレッスンやTOEICの資格対策はほとんど行われていません。

大学はそもそも専門学校や職業訓練学校ではないので、就職に直結するような「スキル」を教えるところではないと考えられています。あくまで「学問」をしだり、「研究」したりするところなんですね。
※最近は就職対策としてスキル向上に力を入れる大学も増えています。

それを知らないと、「英文科に行ったのにぜんぜん英語力が上がらなかった…」なんてことになりかねないので、注意が必要です。

英文科へ行くメリットとデメリット

では実用的な英語が学べないとしたら、大学の英文科へいくメリット&デメリットは何でしょうか?

3つのメリット

1.英語の教職課程がある

英文科はだいたいどこも、英語の教員免許がとりやすいカリキュラムになっています。教職課程をとって、採用試験に合格すれば、英語の先生(中学、高校)への道が開けます。教員志望の方にとっては、英文科専攻は鉄板コースですね。

2.言語の細かい仕組みがわかるようになる

文法や音声学、さらに英語史など、言葉の成り立ちや発展の過程を学べます。英語を単なる「コミュニケーションのツール」ではなく、「分析・研究の対象」としたい人にとっては、魅力的な授業が多いです。教師として英語を教えるときにも多少役立つ知識が得られます。

3.言葉の裏にある文化・社会背景が学べる

映画(英語)を見たり、洋書を読んだりするのにも、英語圏の文化・社会的知識があるのとないのでは大違いです。たとえば、TIMEやThe Economistなど一流の雑誌・新聞には、シェークスピアやディケンズなどの名文をもじった文章が普通に出てきます。英文学を学ぶと、そういう書き手の遊び心やユーモアのセンスを楽しめるようになります。

3つのデメリット

1.英語があまり話せるようにはならない

授業では、英語を「使う」トレーニングはほとんどありません。言語学的な知識をたくさんつめこんでも、英語力の向上にはあまり役立ちません。それどころか、逆に細かいことなどに気をとられすぎて(委縮して)、話せなくなる可能性があります。英文科の学生ほど「英語コンプレックス」「英語嫌い」が多いといことも言われます。

2.実用的でない英語を読まされる

学問なので、英語を聞いたり、話したりするより、読むことの方が多いです。しかもニュースや海外ドラマなどではなく、昔の文学作品とか、言語学の教科書(論文)だったり、今のネイティブが普段使わないような英語を学びます。勉強にはなりますが、実用的とはいえません。基本的には、英文学などに興味のない人には苦痛かもしれません。

3.まわりから「英語ができる」プレッシャー

世間的には、英文科を出て英語ができなかったら「え?」という目で見られます(コンピュータ科学専攻なのにパソコンのことがわからない人と同じです)。就職活動でも、英文科でない人よりTOEICの点数が低いとマイナス評価になりかねません。会社に入ってからも、英文科卒だと、会議の通訳や文章の翻訳をお願いされたりします。なにかとプレッシャーを受けやすい立場です。

英文科へおすすめの人は?

次の人は英文科へ行っても後悔しないでしょう。

  • 学校の先生(英語教師)になりたい人
  • 英文学や英語学を学びたい人(将来研究者になりたい人)
  • 英語系専門職(通訳・翻訳)につきたい人

この3つのいずれかに当てはまる人には、英文科はよいチョイスです。

補足
ただし、通訳・翻訳の場合、英語以外の専門があった方が有利な場合が多いです。たとえば、英語ができて医学の知識がある人なら、その専門分野の通訳・翻訳者として充分にやっていけるでしょう。

大学時代に学んでおきたい3つの教養とスキル

それでは英文科で学ぶことになった学生が、将来、英語関連の仕事(教師、通訳、翻訳)を目指すとして、大学時代にどんな学問を学んでおけばよいのでしょうか。
ここでは「英文学」や「英語学」(言語学)以外でおすすめのクラスを3つ紹介します。
もし所属学部に該当する授業がなければ、他の学部でとれないか確認してみましょう。

聖書(キリスト教)

言うまでもなく、キリスト教は欧米文化圏の礎みたいなものです。『ダ・ヴィンチ・コード』をはじめ、昔から映画・小説にはキリスト教に関する場面がよく出てきますし、ニュース記事のタイトルなどに聖書の一節が引用されることも日常茶飯事です。それくらい、キリスト教は欧米人の生活に密着しています。
日本人にはあまりなじみがないので、 せっかく英語力がついても、宗教的知識が足りないために、ネイティブの話が理解できない、ということは多々あります。1年やそこらの勉強でとても理解できるような簡単なものではありませんが、学生のうちに(できれば英語で)聖書を読んで、キリスト教についての理解を深めておきましょう。

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余裕があれば、仏教やイスラム教など、他の宗教についても基本的な知識を身につけておくと、さらに世界が広がるよ!

アメリカ史(文化史)

TIMEを読んだり、CNNを見たりしていると、アメリカの歴史の話がいろんなところで結構出てきます。オバマ大統領をはじめ、政治家の演説やインタビューなどでも、歴史的な出来事について言及されることはよくありますよね。
とくにアメリカはまだ建国から240年ほどしかたっていないので、歴史上のさまざまな出来事が現代の政治・社会問題につながっていることが感じられやすいです。政治や外交だけでなく、文学や音楽などの「文化史」も含め、ぜひアメリカの歴史の基本的な流れをおさえておきましょう。

英文ライティング

英語のライティングは、単なるスキルではなく、英語圏の文化そのものです。ペーパー(レポート)の書き方にはきちんと決まったスタイルがあります。国語の授業で習うような「起承転結」とはまったく違います。
アカデミック・ライティングを学ぶことで、論理的な文章展開や表現だけでなく、リサーチの仕方、正しい引用方法、著作権の知識など、いろいろスキルが身につきます。海外企業を相手に英語のビジネスメールやレジュメを書くときにもこういう「基本」は役立ちますよ。

さいごに:英文科で学ぶ意義とは

かっこいいことを言うと、「英文科」は英語屋にとっての「MBA」みたいなものです。

MBAは、経営者(ビジネスリーダー)を目指す人にとっての武者修行の場ですよね。

英文科も、英語のプロ(教師、通訳、翻訳)を目指す人にとっての修行の場です。

もちろん、授業で得た知識が、すぐに外国人とのコミュニケーションで役立つことはあまりありません。また英文科を出たからといって、英語関連の職業につけるわけでもないでしょう。

でも洋画を見たり、ペーパーバックを読んだり、ビジネスメールを書いたり、など英語を使うさまざまな場面で、英文科で学んだ知識や経験は活きてくるはずです。

ぜひ英語で食べていきたい、英語の世界にどっぷり漬かりたいという人は英文科の門をたたいてみてくださいね。

Good luck!