【英語上級者向け】日本人が必ず誤訳する『老人と海』の英文10選

『老人と海』の写真
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macha

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翻訳家。大学で英米文学専攻、大学院で言語学修士。英語教育の現場に携わり、現在はおもに翻訳関係の仕事をしています。英検1級、TOEIC満点。
ヘミングウェイの『老人と海』(The Old Man and the Sea)は、高校生でも読めるくらい簡単な「ペーパーバックの入門書」と一部では紹介されているようです。でも、それはあきらかに大きな誤解です。ヘミングウェイの小説には、実際は、非ネイティブにとってかなり難易度の高い英文もばんばん登場します。ここでは、小説中から英語力のある学習者でも読み違えると思われる10の文章を取り上げ、解説します。

この文章、きちんと読めてますか?

so ~ that

“There are many good fishermen and some great ones. But there is only you.”
“Thank you. You make me happy. I hope no fish will come along so great that he will prove us wrong.

老人ほどの釣りの名人はいないと語る少年に、老人が返した言葉。
最後の文章の意味を理解できただろうか?
「so ~ that」構文だが、少し特殊な形をしている。ここでso greatが指しているのは、fish。
「とてつもない魚がやってきて、私たちが間違っていた(私は釣りが下手だった)なんてことにならないといいけど」という意味。

no ~ not

There was no part of the hook that a great fish could feel which was not sweet smelling and good tasting.

no ~ notで二重否定になっていて、that挿入句まで入った、少し複雑な文章となっている。
構造をわかりやすく整理すると、
There was no part of the hook (that a great fish could feel) [which was not sweet smelling and good tasting].
hookは釣り竿の針のこと(老人はこの針にエサのいわしをたっぷり刺している)。
whichはhookにかかる関係代名詞。
直訳すると「大魚が感じるに、いい匂いがしない、おいしいと思わない部分はない」、つまり「大魚が針のどの部分をつついても、いい匂いでおいしいと思うだろう」という意味になる。

that which

Now is no time to think of baseball, he thought. Now is the time to think of only one thing. That which I was born for.

「今は野球について考えている場合ではない。今考えるべきことはたった一つ。」
最後の文章を「なぜ私が生まれてきたか(について考えるときだ)。」とするのは誤訳。
ここでは「今考えるべきこと」の中身について語っているのではなく、「そのために私は生まれてきた」と語っているにすぎない。
whichはthatにかかる関係代名詞。「I was born for that.」と置き換えられる。

この単語の意味、勘違いしてませんか?

green

“How old was I when you first took me in a boat?”
“Five and you nearly were killed when I brought the fish in too green and he nearly tore the boat to pieces. Can you remember?”

少年マノリンと老人サンティアゴの会話。少年が5歳のときに老人は初めて少年を海に連れていった。そこで釣れた大魚が大暴れして、船が壊れそうになった、という話をしている。
ポイントはgreenという単語。ここでは「緑色」の魚を捕まえたという意味ではなく、「活きがいい、元気な」という意味。

ship

He shipped his oars and brought a small line from under the bow.

ここでのshipは「船」ではなく、「船に積む」という意味の動詞。
「オールを船の中に入れた」という意味になる。
bowは「船首」。
from underと前置詞が続くが、「船首の下から~」という文字通りの意味。

fast

I’m being towed by a fish and I’m the towing bitt. I could make the line fast. But then he could break it.

老人の言葉。
fastを「速く」と解釈した人はいないだろうか。ここでは「固定して」という意味(小説中、多出)。
訳すと、「私は魚に引っ張られている。これではまるで(私が)船を曳航する杭みたいではないか。釣り糸をどこかに固定しておくこともできる。でもそうすると糸が切れてしまうかもしれない。」となる。

sound

What I will do if he decides to go down, I don’t know. What I’ll do if he sounds and dies I don’t know.

「やつ(魚)が潜っていったらどうしよう。わからない。もぐってそのまま死んでしまったら、どうしようもない」
ここでのsoundは「音」ではく、動詞の「もぐる」という意味。
簡単な単語を使っているように見えても、ヘミングウェイの英語が難しい理由はこういった言葉遣いにもある。

この口語表現、すぐ理解できますか?

dressed out

“How would you like to see me bring one in that dressed out over a thousand pounds?”

老人が少年に質問した言葉。簡単な単語が並んでいるが、単語の切れ目がわかりづらい。
oneは、話の流れから、ここでは魚を指している。
構造をわかりやすくすると、
How would you like to see me bring one in (that dressed out) over a thousand pounds?
bring inは「持って帰る」。
dressed outは「服をはいで、いらない部分をのぞいて」。
thatはoneにかかる関係代名詞。
つまり、「いらない部分をとっても1000ポンドはする魚をとってきてあげようかい?」という意味。

take in

“Stay at my house if you like, bird,” he said. “I am sorry I cannot hoist the sail and take you in with the small breeze that is rising. But I am with a friend.”

老人が船の上で小鳥に話しかけている。
take inは「連れて帰る」という意味の熟語。
せりふ部分を訳すと、「小鳥よ、私の船でゆっくり羽を休めるといい。少し風が出てきたから、帆を上げて、君を陸に連れて帰ってやりたいところだが、悪いがそうはいかんのだ。今、私は友達と一緒なんだ」となる。

against

I wish I could see him. I wish I could see him only once to know what I have against me.

魚を一目でも見たいと願う老人。
最後の「what I have against me」は、「(私は)どんなやつを相手しているのか」。
againstはここでは「敵対して」という意味で、「fight against the enemy」(敵と戦う)といった使い方をする。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
結構難しい…と感じた方も少なくないのではないでしょうか。
でも心配はご無用。ヘミングウェイの作品は、はっきり言って、かなりの英語上級者向けです。
ここにあげている例文以外にも、『老人と海』には難解な文章、意味不明な文章がたくさん出てきます。
TOEICなどは楽勝、というレベルの人でないときついと思います。
そうでない人は、もっと簡単なペーパーバックから読み始めることをおススメします。
そして、いつかこうした古典文学の世界にチャレンジするのを目標に頑張っていきましょう!

※『老人と海』を英語でどうしても読んでみたい、という人はこちらの記事で方法を解説していますので、ぜひご覧ください。